旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する
一時金の支給等に関する立法措置について(基本方針案)


2018年3月に結成された「優生保護法下における強制不妊手術を考える議員連盟」と「与党旧優生保護法に関するワーキングチーム」が、12月10日、これまで検討してきた内容を双方合意により「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する立法措置について(基本方針案)」として公表した。
下記は2018年12月10日に開かれた、「優生保護法下における強制不妊手術を考える議員連盟」第9回総会で配布された文書から書き起こしたものです。誤字脱字があり得ることをご承知おきください。

※「優生手術に対する謝罪を求める会」がこの基本方針案について提出した要望書は、こちらでご覧ください。

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旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する 立法措置について(基本方針案)

1 前文

  1. 昭和23年に制定された優生保護法に基づき、あるいは同法の存在を背景として、特定の疾病や障害を有すること等を理由として多くの方々が、平成8年に改正が行われるまでの間、その生殖を不能とする手術や放射線の照射を強いられ、心身に多大な苦痛を受けてきたことに対して、我々は、真摯に反省し、心から深くおわびする。
  2. 今後、このような事態を二度と繰り返すことのないよう、障害や疾病の有無によって分け隔てられることなく全ての国民が相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向けて努力を尽くす決意を新たにするものである。
  3. ここに、国としてこの問題に今後誠実に対応していく立場にあることを深く自覚し、対象者に対する一時金の支給に関し必要な事項を定めるため、この法律を制定する。

2 対象者

次に掲げる者であって、この法律の施行の日において生存しているもの
  1. 優生保護法第2章の規定により優生手術(同法第2条第1項に規定する優生手術をいう。)を受けた者(同法第3条第1項第4号又は第5号に規定する者に該当することのみを理由として、同項の規定により優生手術を受けた者を除く。)
  2. (1)のほか、旧優生保護法が施行されている間(昭和23年9月11日から平成8年9月25日までの間)に、本人又は配偶者が旧優生保護法に規定する疾病若しくは障害又は当該障害以外の障害を有していること等を理由として、生殖を不能とすることを目的とする手術又は放射線の照射を受けた者

3 一時金の支給

  1. 対象者には、一時金を支給する。一時金の額は、一律とする。
    [※一時金の具体的な額は、諸外国の例も参考に引き続き検討し、法律案を提出するまでの間に決定する。]
  2. 対象者が、4(1)の一時金の請求をした後に死亡した場合であって、その者が受けるべき一時金があるときは、その者の配偶者等で死亡時に生計同一であった遺族に支給し、遺族がないときは相続人に支給する。

4 権利の認定

  1. 一時金の支給を受ける権利の認定は、これを受けようとする者の請求に基づいて、厚生労働大臣が行う。
  2. 厚生労働大臣の認定を受けようとする者は、その居住地の都道府県知事を経由して請求を行うことができる。
  3. 請求は、この法律の施行の日から起算して5年以内に行わなければならない。この請求期限については、この法律の施行後における一時金の支給の請求の状況を勘案し、必要に応じ、検討が加えられるものとする。
  4. 厚生労働大臣は、請求があったときは、優生手術に関する記録に当該請求に係る事実の記録がある場合を除き、当該事実があったかどうかに関し旧優生保護法一時金支給認定審査会〔仮称〕(以下「認定審査会」という。)に審査を求めなければならない。
  5. 認定審査会は、厚生労働省に置かれるものとし、医学、.法律学、障害者福祉等に関する専門的知識を有する者で構成する。
  6. 認定審査会は、(4)の審査において、請求に係る事実について記録した資料がない場合においても、本人及び関係者の供述、医師の所見その他の資料を総合的に勘案して、適切な判断を行うものとする。
    [※参考とする資料の例
    ・本人及び家族の証言
    ・処置をした医師、福祉施設職員その他の関係者の証言
    ・手術痕等についての医師の診断書
    ・不妊手術等を受けたとする時期に請求者が旧優生保護法に規定する疾病に罹患し、又は障害を有していたことを示す資料]
  7. 厚生労働大臣は、(4)により認定審査会に審査を求めた請求については、その審査の結果に基づき、認定に関する処分を行わなければならない。
  8. 厚生労働大臣及び認定審査会並びに都道府県知事は、必要があると認めるときは、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
  9. 認定審査会は、必要があると認めるときは、請求者に対して、指定する医師の診断を受けるよう求めることができる。

5 周知等

  1. 国は、この法律の趣旨について、広報活動等を通じて国民に周知を図り、その理解を得るよう努めるものとする。
  2. 国及び地方公共団体は、国民に対し一時金の支給を受けるのに必要な情報を十分かつ速やかに提供するために一時金の支給に関する制度の周知を適切に行うとともに、一時金の支給の請求に関し利便を図るための相談支援の業務その他の必要な措置を適切に講ずるものとする。この場合において、対象者の多くが障害者であることを踏まえ、障害者支援施設その他の関係者の協力を得るとともに、障害の特性に十分に配慮するものとする。
    [※具体的な周知等の措置のイメージ
    ・障害福祉サービスの認定、障害者手帳の更新等の行政手続の機会を利用したきめ細やかな案内
    ・行政による相談窓口の設置
    ・弁護士会、医療関係者等の幅広い関係者の協力を得た相談支援の実施
    ・広報用ポスター・パンフレットの活用
    ・医療機関、障害者支援施設等を通じての申請の呼びかけ]

6 その他

一時金については、公租公課を課することができない。
[※優生手術等に関する調査の在り方については、法律案を提出するまでの間に検討する]

優生保護法下における強制不妊手術を考える議員連盟
与党旧優生保護法に関するワーキングチーム