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【本の紹介】

アンドレア・ドウォーキン著 柴田裕之訳
『ドウォーキン自伝』

青弓社・本体価格2400円

タイトルどおり、アンドレア・ドウォーキンの自伝である。といっても、時系列にそった自伝というよりは、自分を振り返りながら書いたエッセイの集積というかんじ。子どものころから、納得できないことはごまかさず、反抗精神に満ち溢れていたことがわかる。 「はじめに」には、こうある。

「わたしがどうしてこういう人間なのか説明を求める人びとは、敵意に満ちた、のぞき魔のような興味をもっていて、彼らがわたしの姿を思い描くときの態度は、作家、とりわけ女流作家が慣れっこになっているありきたりな無礼さや傲慢さの比ではない。だからわたしは書くことで応じる。・・・わたしに言わせれば、自分はこんな人間だ――野心家だけれど、けっして金儲けが望みではない。すべてとは言わないが、ほとんどの面でまっとうだ。そしてオーバーオールを着ている。くたばれ、このあばずれ。だがこのあばずれは、そう簡単に死にはしない。彼女は、いいぞと、一人小さな部屋で声をあげる」

こんな調子の痛快な文章がつづく。スタートは、音楽とのかかわり。子どものころピアノを習い、ベニントン・カレッジで音楽を進むが、女子学生が学ぶべきは、芸術家の娼婦になることであって、自らが芸術家になることではないことに気づく。
そして、中学高校で出会った教師たちの思い出。「たいていの大人が四六時中子どもに嘘をついているために、子どもに性的興味を抱く変態の大人だけが真実を教えてくれる人物であるように思えてしまう」という皮肉な現実。小学校時代、ユダヤ人であるドウォーキンは「きよしこの夜」を歌うことを拒否して放課後の教室にひとり残される。
大学女子寮の男子禁制や門限廃止を求める自主管理闘争、ベトナム反戦運動や公民権運動に参加していく。逮捕されて入った拘置所で、内診という名の性暴力にあい、法廷に訴える。ヨーロッパにわたり、結婚した男に暴力をふるわれる。DVだ。しかし誰に言っても信じてもらえず、むしろ「悪いのはあなたでしょ」と非難される。そんなとき、たばこを押し付けられた胸の傷をみた女性医師が、「ひどずぎる」とつぶやく。その言葉に、ぼろぼろになったドウォーキンは、この言葉に救われる。

ああ、もっともっと紹介したい。
フェミニズムが歴史のなかで生まれてきた必然性、フェミニズムはなぜ女にとって必要なのかを痛感させるもろもろを、自分の半生と重ねながら描かれているのだ。
とくに興味深いのは、左翼の平和主義者であることとフェミニズムとの関係。「左翼の男どもが愚劣だからといって、反戦運動や、アパルトヘイト反対の活動などをやめるわけにはいかなかった」というドウォーキン。でも、ペトラ・ケリーが愛する男性に殺され(それはよくあるありふれた出来事だ)、その追悼集会で非暴力平和主義者たちが誰も男の暴力に言及しないことに怒り、ドウォーキンは制止を振り切ってスピーチする。会場は敵意に満ちた態度でドウォーキンをやじる。でも、会場を走り去るとき、「ありがとう」とひとりの女性が言う。「それで十分だ」とドウォーキンは思う。
豪華なホテルで開催される全米女性機構NOWの総会。反ポルノへの取り組みを訴えようとするが、手続き論で拒否される。しかし、ポルノと買春に抗議する地元グループと合流してデモ行進する。貧しい者を見捨てて攻撃するフェミニストの悪癖を嘆くドウォーキンは、ほんとうにラディカル。

思わず涙腺がゆるんでしまうエピソードがいろいろある。そうそう、もうひとつ。ウーマンリブの意識昂揚(CR=コンシャスネス・レイジング)は、もともと共産主義中国で行なわれていた「訴苦大会」がもとになっているとドウォーキンは指摘している。この説、みなさんは知ってました? ぜひご一読あれ。
(ゆかこ)