少子化社会対策基本法案に対する附帯決議

平成15年7月22日 参議院内閣委員会


 政府は、本法の施行に当たり、平成十三年六月二十二日の本院「少子化対策推進に関する決議」を踏まえ、次の事項について、適切な措置を講ずべきである。
  1. 少子化に対処するための施策を推進するに当たっては、結婚、出産や子育て、家族に関する国民の多様な価値観及び当事者の意思を尊重するとともに、子どもを有しない者の人格が侵害されることのないように、また、婚外子がいかなる差別も受けることのないように十分配慮すること。
  2. 子どもは次代の社会の担い手であり、子育てについては父母が第一義的責任を有するとの認識の下に、子どもを生み、育てる者の経済的、精神的その他の負担及び不安の軽減に資する施策の充実に努めること。
  3. 国連の国際人口・開発会議で採択された行動計画及び第四回世界女性会議で採択された行動綱領を踏まえ、女性の生涯を通じた身体的、精神的及び社会的な健康に関わる総合的な施策を展開するとともに、これらの行動計画及び行動綱領の正しい知識の普及に努めること。また、結婚や出産は愛情、信頼及び責任を紐帯とする男女の自由な意思に委ねられるべきものであることについて、啓発及び教育活動を強化すること。
  4. 子どもを生み、育てる者が充実した職業生活を営みつつ豊かな家庭生活を享受することができるようにするための取組に関し、事業主がその責務を十分に果たすことができるよう、育児休業制度等の充実、労働時間の短縮の促進、再就職の促進その他の雇用環境の整備のための施策に万全を期すこと。
  5. 保育サービス等の充実を図るに当たっては、病児保育、低年齢児保育、休日保育、夜間保育、延長保育及び一時保育のほか、障害児保育の体制の整備のための施策を講ずること。
  6. 不妊治療に係る情報の提供、不妊相談、不妊治療に係る研究に対する助成等の施策を講ずるに当たっては、不妊である者にとって心理的な負担になることのないよう配慮すること。また、生殖補助医療については、医学的見地のみならず、法的、倫理的、社会学的見地等を含め、多角的な見地から検討すべきこと。
  7. 望まない妊娠や性感染症の予防等に関する適切な啓蒙、相談等の取組を図ること。
  8. 少子化に対処するための対策の一環としてのゆとりのある教育は、父母をはじめ保護者の心理的な負担を軽減するためのものであって、子どもの学習意欲や向学心の低下を招くものであってはならない。したがって、ゆとりのある学校教育の実現を図るための施策は、国際化時代の我が国の将来を担う子どもに基礎的・基本的知識を確実に習得させ、また、それぞれの能力を最大限に伸ばし、かつ、豊かな人間性や社会性及び生きる力を育むことを助長することを旨として策定し、実施すること。
  9. 出産を望みながらも精神的、経済的負担に悩む妊産婦に対する相談等の支援の充実を図ること。
  10. 教育及び啓発の推進に当たっては、児童虐待、いじめ、犯罪又は様々な差別から子どもを守る視点からの取組を推進すること。
  11. 少子化の進行に適切に対処するための施策を総合的に推進するため、結婚相談事業に対する支援を含む各般にわたる制度の充実、必要な予算の確保等に努めるとともに、少子化の諸要因とその対応策についての調査研究を一層推進し、その結果を施策に反映させること。
  12. 少子化対策においては、子どもが安心して成長できる環境をつくることが重要であり、そのため、国及び地方公共団体は、青少年が健全に育成できる良好な社会環境の整備が図られるように十分配慮すること。
   右決議する。