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「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案」
に対する意見書


参議院文教科学委員会御中
委員各位殿


 「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案」について、参議院における審議が始まると聞きます。この法の成立は、あまりに性急であると思います。
 法案は、クローン個体を作ることは禁止しながら、それ以外のヒト胚・動物胚の融合、交雑を大幅に認めています。これらの技術の解禁が社会に、また生命観、健康観にどのような影響を与えるか、市民の多くはその重大さを考える機会を得ていません。
 女性の生殖をめぐる問題に関心を持ち続けている私たちにとって、クローン技術が女性の卵子、受精卵の使用を前提としている点は、とくに見過ごすことができません。次の点で、大きな疑問と不安を抱いています。
  1. 人の生殖細胞を、本人の生殖以外に利用することについて、議論が全く不十分です。

  2. 卵子や受精卵は、病院などの現場から得るのでしょうか。これまでも、生殖細胞は研究目的に利用されていますが、提供者への説明や同意の確認、その手続きのあり方は確立されていません。不妊治療を受けている女性達から、卵や受精卵がどのように研究に供されているのか、その実体は現在でさえ非常に不透明です。この法の成立は、この状況を更に悪化させるのではないかと、大きな不安をおぼえます。

  3. この法案はまた、いずれ医療産業が営利を目的として生殖細胞を利用することを前提としていると思われます。生殖細胞は医療現場から商業利用の場へ持ち込まれることになりますが、その際に起こりうる問題について、法案では明らかでありません。医師あるいは病院と患者の関係が必ずしも対等でない現状を考え合わせれば、患者の意志及び人権が蔑ろにされる恐れが大ききいと憂えざるを得ません。

  4. 人の生殖細胞の利用は、生殖細胞以外の人体も、産業の資源として利用、売買、譲渡される道をも開くおそれがあります。
衆議院での法案可決に際して修正された付則と、附帯決議の中に、「ヒト受精胚は人の生命の萌芽」とする文章があります。このことから、法案とその審議に対する疑問をいっそう強めました。
「ヒト受精胚は人の生命の萌芽」とは、たいへん重い言葉です。"生命"とは"萌芽"とは何か、"萌芽"はいつから"生命"となるのか、そこに明確な境界はあるのかといった議論をとことん尽くし、さらに、法律の中に書く言葉として適当であるのか、他の法との整合性についても議論を尽くさねば、使える言葉ではありません。

法案審議において、生命倫理についての議論はまったく不十分ですが、付則と附帯決議に関しても、どれほどの議論があったのか非常に疑問です。この法律により、卵や受精卵を"提供"する立場になる女性として、これではとうてい納得できません。

以上について、市民が検討するために十分な知識と場と時間が、法の成立に先だって必要です。「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案」の成立には強く反対します。はばひろい市民の検討の場を作るべく、努力してください。

2000年11月23日
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